ひとまず最後に

岡山から東京へ帰る新幹線の中で、車窓の外の景色を眺めながらでこの半年間の採訪の旅のことを思い返していました。当初は現場探索のみのつもりではじめたもので、まさか制作の根幹を担うものになるとは思いもせず、教授との話し合いや制作の進行で要素が定まって行くうちに取材や調査の拡大の必要性も出てきて人見知りで計画性の乏しい私は、不安要素が日々募っていくばかりでした。ですが、うまくいっていたかはさておいて、終わってみればそれらは経験としてとても色濃く残り、すでに結果よりも十分意味のある活動であったのではないかと今では自負しております。

 

祭りとは本当に様々な魅力ある要素が詰まっていて、とてもすべてをここで語り尽くせないのですが、私としては今回の一連の採訪の中で祭りとは「出会い」の場でもあるということを特に強く実感しました。秋田県花輪ばやしでの沼田さんが「地域の人々同士は祭りのために一同に介しお互いの近況や無事を確かめ合い、遠く離れていた家族や友人同士は再会する日なんだ」とおっしゃっていたことに加え、私のようなよそものがその土地の人々と話し合えたのは、祭りという媒体があったからに他ならないでしょう。民俗学者の中には、多くの祭りは観光資源化が主になっており本来の意味をなしてないと言う人もいますが、私としては伝統を守りたいという心が人々を結束させ、そこに出会いがあれば、はじめた人たちも言うことなしだと思います。

 

また、情報というものには「味わい」が必要なのだとも感じました。私も普段はインターネットや書籍から色々な情報を得ていますが、忘れっぽい性格も災いして消費したら忘れてしまうことがとても多いです。ですが、やはり現地の人から直接聞く話にはそれぞれの声や話し方や眼差しからにじみ出る味わいというものがあり、それを真に受け止めることでその内容はいつまでも記憶に残り続けるように思います。うちの学科が実際に現地に行ってみることを強く押すのも多分そういうことなのかもしれません。

 

さて、これからは本題の卒業制作の制作にとりかかるのでひとまず採訪の旅はここで終わりとなりが、今回のかけがえのない経験から祭りだけではなく、日本という土地の素晴らしさ、その魅力にも改めて気づくことができたので、私はこれからも採訪の旅を続けて行こうと決めました。

その時々、気力があればまた報告します。では。

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