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8月20日(土)遠野地方の現地調査

遠野は岩手県遠野市を中心とする地域一帯のことで民俗学の開拓者であると言われいている柳田國男の名著「遠野物語」の舞台となった場所です。「遠野物語」とは柳田が1910年に発表した遠野地方の逸話、伝承などを集めた説話集のことで民俗学の夜明けを告げた原典として日本を代表する文学作品と言われています。

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内容は天狗、河童、座敷童子など現在でも広く知られている妖怪ものから山人、マヨヒガ、神隠し、臨死体験、あるいは祀られる神とそれを奉る行事や風習に関するものなどで、これらはすべて遠野の住民であった佐々木喜善(鏡石)(後にこの人も民俗学者になります)により語られた話を柳田が書き起こしたものです。

ゲゲゲの鬼太郎」の作者である水木しげるは「ゲゲゲの鬼太郎」執筆時にこの本を大変参考にしたらしく、ゆかりの人として市の観光案内物のイラストを手掛けたり後に遠野物語自体の漫画本も出版したりしています。

遠野はこれらのことから民間伝承や昔話の語りを現在も引き継いでおり、観光施設では実際に語りを聞くことができるということです。

 

日本の口承文芸のメッカとも言える場所なので東北に来たからには外せないということもありますが、私が高校時代に愛読していた恩田陸の小説「常野物語」シリーズのモデルとなった場所でもあるので遠野には個人的な思い入れもありました。

また、現在タイポグラフィの授業の成果として「遠野物語」の初版本の研究をしており、現物を見たかったということも大きいです。私が所属している視覚伝達デザイン学科主任教授である新島実先生によると遠野物語の初版本はエディトリアルデザインとしても大変優れているものであるそうです。

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大滝温泉駅の宿を早朝に出発、盛岡駅を経由し遠野駅に到着したのは13時頃でした。高校時代から思いを馳せ、いざ降り立った遠野駅の周辺は私が思っていた以上に遠野物語は観光誘致に用いられているようで水木しげるのイラストの看板や遠野物語の序文が彫られた石像など遠野物語に関連した施設やモニュメントがいたるところにありました。

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事前のリサーチで行きたい場所は山ほどあったのですが施設の閉館時間や移動距離を考慮し今回は駅からほど近い「とおの物語の館」と「遠野市立博物館」を中心に周りました。

まずはじめに訪れた「とおの物語の館」は資料館としての展示施設はもちろん柳田國男が滞在した旧高善旅館や晩年まで過ごした隠居所を再現した建物や昔話が実際に聞ける遠野座という施設もあり、まさに今回の調査の手始めにうってつけの場所でした。

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館内は主に「昔話蔵」、柳田邦男の資料の展示施設、実際に昔話を披露する「遠野座」という施設に分かれます。「昔話蔵」は昔話の系譜、ライブラリ、インスタレーションなど様々な形態で昔話を知ることができる体験施設です。特にインスタレーションは地方の展示施設とは思えないほどクオリティが高く仕組みの練られたおもしろいものばかりで関心しました。柳田邦男展示館は柳田邦男が民俗学を志すまでの年表から生涯で執筆してきた作品の一部の展示など柳田邦男についてとてもよくまとめられている施設でした。

入館してしばらくこの二つの展示施設を行き来し、その後1日に数回遠野座で行われる昔話の語りを聞きに行きました。平日だったので人はまばらでしたが外国人の観光客なども聞きに来ていました。〜さんという方が私の見に行った時に語り部で時間になり慣れた様子で語りをはじめました。

語りは遠野弁で語られ正直ほとんど何を言っているかわからず内容はなんとなくかいつまんで理解できるという程度でしたが実際に囲炉裏をかこんで聞いているようで新鮮な体験でした。

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 とおのものがたりの館を後にし、そこから橋を渡って少し歩いた鍋倉城跡の傍にある市立博物館を訪れました。博物館は主に遠野地方の民俗文化や歴史についての展示が主で経年を感じる外観に比べ内装は清潔で広々とした印象を受けました。ここでももちろん遠野物語を扱った展示スペースが設けられており、2階部分は昔話を映像で楽しむことができるシアタールームになっていました。常設展によりますと遠野地方は内陸と海岸の中継地であり、多くの人と物が行き交った政治と経済の中心であったようでその様子が絵巻のように描かれており、さらに遠野は山々に囲まれた土地ですのでその暮らしぶりや使用した道具類なども多く展示されており、昔から漠然と憧れのようなものを抱いていた遠野という土地のことを短い時間でしたが以前より詳しく知ることができてよかったです。

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博物館を出た後はすぐそばの南部神社に軽く参拝しました。子孫・一族繁栄、地域・家内安全のご利益があるとのことです。

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その後は盛岡に帰れるギリギリの時間まで遠野の町を歩いて周りました。人通りがあまりなく閑散としている割に道幅が広く、車が行き交う交差点などでは渡るのに少し小走りで歩かなければいけなかったりと私の思いの外広い土地なのだと歩いていて実感しました。名所として有名なかっぱ淵や伝承園なども中心地からかなり離れた場所にありおそらく歩いて行くのはかなり困難だと思われます。

歩いているうちに四方を山に囲まれている土地のせいか地元の京都市の町を重ね少し懐かしさを覚えましたが時間の流れはこちらの方がゆっくり流れているように感じました。大通りから離れた路地に入っていくと古い家がまだ多くあり、中心地から離れた場所には広大な田んぼも広がっていました。雲の多い夕暮れに佇む霧深い山々には確かに妖怪が住んでいても不思議ではないなと思える独特の妖しさがありました。と同時に「永遠の日本のふるさと」にふさわしい日本の原風景のようなゆっくりとした時間を感じることができ、訪れてよかった思います。

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次は香川県滝宮です。